毛細血管領域での水分の出入りは、ほとんどすべての体液は動脈から静脈に流れ去りますが、ほんの一部のみリンパ管に還ります。これを洗面台の蛇口(動脈側)から出た水と考えてみます。水のほとんどすべては排水管(静脈側)に流れ落ちますが、溢れそうになるとオーバーフロー口(リンパ管)が働きますので溢れません。リンパ管はこのオーバーフロー口のような存在なので、その働きがもの凄く良ければ溢れない、すなわち絶対にむくまないことになります。そのため、すべての浮腫はリンパ機能の代償不全、すなわちリンパ浮腫とも言えますが、当然それは誤りです。多くの場合は、配水管(静脈側)の流れが悪い事が原因なので、”静脈性浮腫”ということになります。オーバーフロー口自体が詰まっていたら”リンパ浮腫”です。蛇口からの水(動脈側からの水の漏れ)が多すぎるものとしては炎症(蜂窩織炎など)などがあります。
廃用性浮腫は原因が主に静脈側にありますのでリンパ浮腫ではありません。この場合は低蛋白性浮腫が主体になっているので全身にむくみがありますが、起立位でむくみは下方に落ちるため両脚がむくみます。一方でリンパ浮腫ではその機序から蛋白濃度の濃いねっとりしたむくみが、例えば片脚(図では左脚)だけに起こります。そのためリンパ浮腫では片脚だけに硬いむくみ、廃用性浮腫では両脚に軟らかいむくみができます。したがって、廃用性浮腫はリンパ浮腫ではなくその病態も異なりますので、リンパ浮腫とは治療法が異なります。
昨今、リンパ浮腫診療の一部に廃用性浮腫を組み込む流れが当然のようになってきておりますが、対応は異なりますので区別する事が必要です。(廣田彰男)
