リンパ浮腫の治療と言うとマッサージ(リンパドレナージ)がまず頭に浮かびます。医者仲間でもそうで、外科の先生から本を書くのでリンパドレナージの項目を書いて欲しい、と依頼を受けたのですが、どうも内科的保存的治療の事だったという事もありました。ではリンパドレナージの位置づけは何か、と言うと、むくみ減少に対する効果はそれほど強くはありませんが、軟らかくしたりして状態を好転させる重要な役割を果たしてはいる、と言うのが実際だろうと思います。
婦人科がん術後の脚のリンパ浮腫を考えてみます。鼠径周辺のリンパ節切除のため脚がむくみます。リンパ浮腫の治療の最も基本となるのは”上げるか押さえるかの圧”です。脚を考えてみると、立っているからむくみは下方に落ちて脚がむくみます。ならば、いつも脚を上げて寝ていればけして脚はむくまない事になります。一方でそんな事は出来る訳はなく、日常生活では常に立っていますから、どうしてもむくみは下に落ちてきます。そのため、起立位ではしっかり強く圧を加えて、むくみが落ちてこないようにしよう、と言うのが弾性ストッキングです。
このように、本当は寝てるのが一番良いけれど、立っている時は弾性ストッキングで押さえる、と言う、これは、重力に負けないようにする”圧”ですが、これが治療上最も基本であって、治療効果の70~80%を占める、と思っても過言ではないと思います。ですが、弾性ストッキングの圧は必要な圧よりどうしても弱いためむくみは完全には取れません。同時に弾性ストッキングは強く押さえてむくみが落ちてこないようにすると同時に、着用して動いているとマッサージ効果が発揮されむくみを押し上げてくれますのでマッサージ効果も期待できます。ですが、それもやはり十分ではなく、どうしてもむくみは溜まりがちになります。
そのような時にもう一息脚からむくみを減らしたいと思った場合にどうするかと言うと、まず脚を上げて寝ている時間を作り、さらにリンパドレナージで少しでも多くむくみの液を取り除きます。歯磨きのような形のチューブ(脚)の中のジェル状の液を出す場合、まず逆さにして流し出し、まだ残っていたら手でしごいて出すようなイメージです。
逆に鼠蹊部や太もも部分は 上げたり弾性ストッキングで抑えたりしにくい部位ですので、リンパドレナージが良い適応になります。股関節部分の運動療法も同様の効果が期待できます。それでもやはりその効果を維持するためには”圧”が必要で、例えばガードルなどを考慮します。このように、リンパドレナージの効果は最終的には弾性着衣によってその効果が維持されます。
腕の場合は状況が少々違います。すなわち、脚と違って腕は日常生活の中で上げておこうと思うと上げておける状況があります。そのため、腕や手を上げるように心がければ、弾性スリーブやグローブをしなくても、良い状況を維持できる可能性があります。また脚でもまだ皮下組織がそれほど挫滅していない初期の頃には、リンパドレナージのみでその進行を抑えることができます。
雑談:私は診療時間以外はクリニックの電話を私の個人の携帯に転送しています。主に蜂窩織炎などの急変に対処するためなのですが、連休の時などは近隣の方から受診の問合せが入ってしまいます。世田谷区では医師会が休日当番を案内しているのでその電話番号を伝えたいのですが覚えていません。それで医師会救急案内の電話番号をスマホのパスワードにして覚える事にしました。ところが、パスワードは指で覚えているので、残念ながら口からスムーズには出てこないのです。面白いものです。(廣田彰男)
