むくみとは皮下組織に過剰に溜まった水分です。多くの場合、血管内から外に漏出してきた体液を静脈やリンパ管にうまく排出できないことが原因となります。
血液の循環は心臓から動脈を経て、腕や脚などの組織の毛細血管領域で、水分や、タンパクで代表される栄養物質(以下タンパク)が血管外に漏れ出て組織を潤したのち、組織から出た老廃物を回収して心臓へ戻します。
この漏れ出る量は実はとても少なくて、流れている血液量(血漿)のほんの1%くらいです。すなわち、循環血液量の99%は血管外に出ることなく流れ去るのです。その1%のうちのいくらかがリンパ管に入り、それが上手く流れないとリンパ浮腫になることになります。そう考えると、リンパ管の障害であるリンパ浮腫の進展はゆっくりゆっくりであって、けして急速に太くなるわけではないだろうと想像できます。
この毛細血管領域での水分の出入りは毛細血管領域におけるスターリングの法則として大変有名なもので、静水圧と膠浸圧の関係で、水分は動脈側から漏出して静脈側に還りますが、実はタンパクは静脈側から出てくるとされますし、さらに最近は、動脈から静脈へとの考え方や、血管外に出てきた水分やタンパクは(静脈ではなく)すべてリンパ管に還る、ともされていたりします。ですがいずれにしても、血管外に漏れ出る量は健康な場合はわずか1%です。
ですので、むくみを来す原因は血管外に出た1%の水分より、血管外に出ることなく流れ去る99%の水分の方が遥かに影響が大きい事が分かります。すなわち、脚にむくみが出た場合、まず考えるのは素直に静脈の血液が流れ去っているかどうかが最も大事で、その最も代表的なものが静脈血栓症です。血栓によって静脈が詰まってしまうと血液が流れませんからてきめんにむくみます。そのため、脚がむくむとまず血栓症が無いかどうかをチェックします。血栓症がなくても静脈うっ滞、例えば心不全などのある場合にはむくみます。
このように一般的にむくむと言うと血管外皮下組織の水分が静脈やリンパ管によってうまく排出されない状況を考えますが、逆に、血管内から血管外へ漏出される水分が増えることもあります。これが炎症、蜂窩織炎の場合です。
炎症では毛細血管領域における血管壁の透過性が亢進、簡単に言えば血管壁の隙間が広く空いてしまうために、血管内水分は大量にしかも急速に血管外に漏れ出てしまいます。そのため炎症の場合には急速にむくみが増え、パーンと張ったような感じになります。これを洗面台で例えて考えてみると、静脈やリンパ管は排水管(もう少し詳しく言うと、静脈は排水管、リンパ管は側面についているオーバーフロー孔と考えると良いです)で、一般的には排水が上手くいかないから洗面台に水が溜まる、というのがむくみの考え方です。ですが、ここで突然蛇口を開けて水を出したら、おそらく急に洗面台の水が増えて溢れてきます。これが炎症(蜂窩織炎)の機序の考え方です。したがって、むくみを減らすには、まず蛇口を閉めること(炎症の治療)が優先します。その上で排水も行います。この蛇口を閉めることが、血管透過性亢進を抑えるために”冷やす”ことになり、その原因である感染症を治す治療が抗生剤ということになります。したがって、蜂窩織炎の治療の基本はまず安静にして冷やすことです。
むくみと言うとつい溜まった水を排除しようと思ってしまいますが、血管外に出てくる水が増えてくることもあるわけで、炎症の場合はまず出てくる水を止めることが大切です。(廣田彰男)
