蜂窩織炎では患肢・発赤部を冷やすことが大事と言いましたが、実際面でのやり方についてお話しします。
その程度にもよりますが、ここでは急に下腿が結構赤くなり熱は37.5℃くらい程度の状況を例に考えてみます。発症したら、とにかく赤くなり始めた時は、その部位を高めに位置させて、安静にして、赤い部分を冷やすことが大切ですが、”赤い部分すべてを24時間ずっと冷やし続ける”ことが基本です。もちろんそんなことはできるわけありませんが、そのことを念頭に置いて下さい。
発症時、実際には冷却グッズなどを思い浮かべると思いますが、最近の凍結した硬いグッズを上と下に1枚ずつ置くと横には隙間ができるので好ましくありません。その場合はせめて3枚にして隙間を埋めます。もちろん先にタオルなどで皮膚を覆っておきます。冷却グッズを抑えるために上から軽く包帯で巻くと良いでしょう。 凍結しない軟らかいタイプの冷却グッズもあります。この方が隙間はできにくいので良い事にはなりますが、凍結していない分早く温まってしまうことが多いです。この場合は頻回に交換すれば良いかもしれません。
このような冷却を患肢全体にするとおそらく全身に寒気が襲ってきますのでそこまでしてはいけません。赤い部分すべてを、と言っても例えば下腿が強かったら下腿のみ、太ももが強かったら太もも中心に冷やすようにします。あくまで、”寒いのを我慢して冷やす”事はしてはいけません。肌に先に巻くタオルで冷え方を調整するように注意して下さい。
このような安静挙上でしっかり冷却するのは、本当は1~2週間続けることが必要ですが、それはさすがにできませんので、おそらく1~2日、できてもせいぜい3~4日までと思います。その後はどうしても寝てるわけにもいかず動いてしまいます。そうするとまた炎症は悪化してきますが、これはもう致し方ない経過です。
ではまだ治りきっていないのに動き始めた時に弾性ストッキングを着用しても良いかと言うと、本当はよくありません。目安としては炎症の真っ赤なほてり、熱感がピークを過ぎて冷めてきた頃かと思いますが、それでも弾性ストッキングは刺激となり蜂窩織炎を悪化させます。火傷の皮膚を強く締め付けて動かすようなものです。ですが仕方ないので履いて、増悪せずに着用できたらしめたもので、後は動き回っている時もできるだけ脚を冷やし気味にしておくように心がけます。その結果脚が再び熱感を帯びてカッカすることなく、徐々に脚の太さも減少してくるようなら経過としては良好で、炎症も良くなってきている事になります。逆に張った感じが取れないとか、細くならないとか、むしろ増悪するようなら着用を止めて再び寝ているしかありません。
昼間弾性ストッキングを着用するのは上記のような考え方ですが、就寝時は布団から脚を出していれば十分に冷えます。逆にあまり強く冷やすことはよくありません。冷やし気味に、クーラーの風などがあたると相当冷えますし、少なくともぬくぬくはさせない程度で十分です。
蜂窩織炎は一度発症するとほぼ完治(赤味が消える)まで大変長く、1~2か月以上かかります。ですが1か月くらいもすると急性期の赤味が消失して、気にしさえしなければ治ったような感じになります。ですが、よく見ると特に足部から足首あたりを中心にした下腿下部には赤味が残っている事が多いです。素足で立ち上がって2~3分じっとしていると赤くなってくることが分かります。それはおそらくまだ炎症が残っていることを示します。
この時期も大変長く、さらに2~3か月経っても消えないでそれが当たり前のようになって感じてしまうことも多いです。炎症があるとその分むくみが強くなりますから、”足がむくんでいる、足首が太い、足背部が丸い”と感じます。従って、そのように感じた時は、”足がむくんでいる”のではなく”足に炎症がある”として対応すると良い事になります。
その後も少しずつ良くなったように思っても、先ほどは”完治”と書きましたが残念ながらおそらく厳密な意味での”完治”はなく、むくみの中に菌はわずかでも残存した状態が続いているものと思われます。そのため、再発すると、ほとんどの場合、前回と同じ部位に発症いたします。ですがその状態自体はけしてそれ以上の事はありませんので必要以上に気にする必要はありません。
なお、蜂窩織炎経過中にアルコールは厳禁です。飲酒によりてきめんに悪化します。肥満は基本的にコントロールが必要です。急性期以降も、そのほか、熱い風呂、過労、運動などは一応悪くは作用しますが、ダメと言うと何もできませんので、様子を見ながら悪化しない程度に取り入れます。ただし、治そうと思うなら飲酒だけは厳禁です。
今回の内容は、私の経験的な考察から記載しております。いわゆる、データに基づいた結論ではありませんので、他の方や、将来、間違いであると否定されるかもしれません。ですが、このように考えて対応すると実際的にはほぼこの通りに経過いたします。私のクリニックでは蜂窩織炎の経過図を用いて、今の状態はここ、とご説明しています。少なくとも、リンパ浮腫の蜂窩織炎では、抗生剤を投与すれば治る、とは考えずに対応した方が良いかと思われます。(廣田彰男)
