患肢が真っ赤で熱が出るというのが蜂窩織炎のイメージです。治療は抗生剤を考えてしまいますが、実はリンパ浮腫の蜂窩織炎の治療でより大切なのは冷やして上げて寝ている事です。ほとんどの場合強力な菌ではないので、大体1日でピークは過ぎます。むしろ、急性期は慌てて病院に行かず、冷やして大人しく寝てることが大切です。ただし、あまり高熱が続いたり、意識がボーッとするなり全身状態の変化が感じられる時は緊急でお近くの病院を受診する必要があります。安静期間は、可能なら1~2週間、現実的には2~3日、もしくは4~5日は大人しくしている必要があります。安静が取れないと抗生剤の効果も期待できません。
私は患者さんに、蜂窩織炎が心配な時は電話して下さい、と伝えてあります。私のクリニックは診療時間外の電話は常に私の携帯に転送されます。その状況によって判断しますが、ご本人から電話いただいた場合は、まず冷やして安静にしていて下さい、数日して落ち着いたら受診して下さい、と伝えています。稀にご家族から、具合が悪くて本人は電話に出られません、という場合は(ご遠方の方が多いので)近くの病院に行っていただくことが多いです。ご家族が電話に出ても遠くからご本人の元気な声が聴こえればまず大丈夫です。
急性期を過ぎた後の対応が重要で、治ったように思っても炎症は多かれ少なかれずっと残っています。残念ながら一度発症するとほぼ完治する事はありませんが、がっかりする必要はありません。よく見ると少し赤くても、それほど赤味が強かったり熱を持っていたりしない状態で、通常はあまり気にもならなければ、そのまま大人しく続いていればほぼ問題はありません。何度も再発して高熱も伴うようでしたらまずいでしょうが、その後きちんとコントロールして細く維持していればほぼそのような事はありません。私のクリニックではほとんどの方は再発した場合、”以前と違って軽かった、少し赤くはなったけれど熱はでなかった”と仰います。赤くなっても経過が頭に入っているから慌てることもありません。蜂窩織炎の経過の図は皆さんに、もうたくさんあるから要らない、と言われるほど何度もお見せして詳しく説明させて頂いております。そのため、再発時電話を頂いても、大丈夫です、とお伝えする事がほとんどで、患者さんも安心して特にご来院はされません。
再発時の発赤部位はほとんどの場合初発時と同じです。これは、おそらく治ったように見えても菌がわずかに潜んだ状況なのだろうと思います。そのため、免疫力が低下して再発する場合はほとんどの場合同じ部位です。また、炎症部位の菌を含んだむくみの液は立てば落ちるので、脚では足元に残りやすいです。炎症を起こした事のある方が素足で立って2~3分すると足首あたりから少し上まで赤くなる場合その可能性が強いと思われます。いつも足先が丸くてむくみが取れないと感じておられる方ではその原因が残存している炎症の場合も多いです。
小学館ニッポニカの記事(リンク先へ飛びます)にも書きましたが、蜂窩織炎と言うと例えば山中で古株でも踏みつけ足に刺さり強い菌に感染して足が真っ赤になり高熱が出る、というようなイメージを持つと分かり易いかと思います。そのため強力な抗生剤を投与される必要があります。ですがリンパ浮腫の場合は、多くの場合弱い常在菌ですが、患肢の免疫力が低下しているために炎症を起こしてしまった、という状況と思います。そのため、抗生剤はそれほど強力なものである必要はなく、むしろ免疫力ー体の抵抗力ーを回復させることで回復します。そこにさらに抗生剤を投与するとより良いだろうと考えると良いだろうと思います。
ちょうどこのブログを書き終えた頃に、朝から下腿が真っ赤になり熱も37.5℃ほど出て近くの皮膚科に行ったら薬は頂いたけれど、病院で点滴してもらった方が良い、と言われた、との事でご相談の電話がありました。リンパ浮腫の蜂窩織炎は一般の医師にはあまり馴染みがなく、急に真っ赤になって発熱もあるため、重症化を心配して点滴や入院をお勧めされる事がよくあります。ですが、初めに書きましたように1日目がピークですので、この方にもその旨ご説明し、1日様子を見て頂きましたが、翌日には予想通り解熱しておりそのままご自宅で経過を診て頂く事になりました。
蜂窩織炎の場合以外でも休日や診療時間外に電話を頂いた方のお名前は分かりやすいように私の携帯電話にそのまま登録させて頂いています。そのため結果的に現在おかかりになっているほとんどの方のお名前が電話を頂いた時点で表示されます。皆さん、私が出ると、アレッ、今日は休みですか?と焦ります。結構楽しんでお受けしています。(廣田彰男)
