糖尿病診療開始のお知らせ

リンパ浮腫

両脚の一次性(原発性)リンパ浮腫

 このような状況は大変珍しいことです。全身のむくみでも重力の関係で脚に現われますから、心臓や腎臓など他の原因疾患がないかどうかをまず確認されることをお勧めいたします。また、広い意味で原因のはっきりしないむくみにリンパ浮腫という診断名をつけられてしまうケースもあるようです。

 時に医療機関で両脚の腫脹を両脚のリンパ浮腫と診断され、専門医療機関などでは手術の適応となり、リンパ管静脈吻合などを施行されることがあるようです。ですが、基本的にリンパ浮腫は片側性であり、両脚が同等にむくむことはまずありません。また、脚のリンパ浮腫はほとんどが婦人科がん手術後の二次性であって一次性は少なく、一次性の発症は思春期に多く早発性と呼ばれ、中年(35歳)以降の発症は晩発性と呼ばれてきわめて稀です。ですので、中年以降の両脚浮腫をリンパ浮腫と診断するのは、ほかの疾患をよほど慎重に除外してから初めて可能となり、私は滅多なことで晩発性リンパ浮腫との診断は致しません。

 中年以降で両脚がむくむのはむしろ他の疾患が多いです。体重の多い方では脂肪浮腫もありますが、一番多いのは低蛋白性浮腫かと思います。血中蛋白濃度7.2g/㎗、アルブミン4.3g/㎗が正常とすると、各々6.5、3.5g/㎗以下で十分むくみは出てきます。ですが、蛋白濃度やアルブミンは低くてもどこの臓器が悪い、と結び付けられないため、医者も軽視しがちなことが多いようで、低くても”ちょっと低いけれど大丈夫”と言われてしまうことが多いように感じています。浮腫を専門にしているものから言わせると、大丈夫ではない、大変な事です。

 では蛋白やアルブミン濃度が低下する原因は何かと言うと非常に広範です。ご高齢の方ではそれだけで低下しますし、ご病気で体力が低下していたりしても低下します。その際、肉などの蛋白質を一生懸命摂ってもあまり急速な改善は期待できません。そのほかに、腎疾患や肝疾患でも低下しますので、あればリンパ浮腫の治療よりそちらが最優先で、リンパ浮腫の治療などしても効果は期待できません。

 ここで少し細かい話をいたします。むくみは血管外に過剰な水分が溜まった状態です。その場での水分の出入りは毛細血管領域で起こりますが、簡単に言う(正確ではありません)と、動脈側から水分やタンパクなどの物質が出てきて水分のほとんど90%は静脈へ、残りの10%の水分と蛋白などの物質はリンパ管へ入ります。ですが、ここで注意したいのは動脈から血管外へ漏れ出てくる量は流れている血液のほんの1%前後であり、ほとんど99%は動脈から静脈へ流れ去る、と言うことです。そのため、静脈の流れが悪くなるとひとたまりもなくむくんでしまいます。もっとも分かりやすいのが静脈血栓症ですが、心臓や肝臓・腎臓などによる全身性のむくみもこの静脈系に関係します。同時に全身性のむくみは立てば重力によって落ちますから下半身のむくみとして現われます。したがってこのような場合の下半身のむくみは脚のむくみではなく全身のむくみであることを意味します。一方でリンパ浮腫では、わずか1%の水分と蛋白などの物質を処理できないからその局所にむくむことになりますが、静脈に比べると圧倒的にその影響力は小さいです。ですので、全身性、静脈系のむくみがあればそれが最優先であり、その後にやっとリンパ浮腫が局所に影響してきます。

 したがって、両脚のむくみがある場合は安易にリンパ浮腫を疑うより、まず全身性の浮腫を考えてみる事をお勧めいたします。最近、リンパ浮腫が知られるようになったのは嬉しいのですが、様々な高度な精査を受けてリンパ浮腫との診断に納得し、あまり必要のない治療をお受けになる事はないようご注意下さい。

 密蔵院安行桜、淡いピンクではなく、くっきりした淡い紅色の印象でした。(廣田彰男)

 

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