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リンパ浮腫

リンパ浮腫の診断

 リンパ浮腫のほとんどは婦人科がんや乳がんの術後リンパ浮腫です。最近は情報も行き渡ってきましたので、患者さんも術後に片方の腕や脚がむくんできたらリンパ浮腫を疑って受診されます。

 その際リンパ浮腫の診断はどうするか。シンプルにがん術後に発症したむくみなのでリンパ浮腫、と診断されるかと言うと、医者の立場からはそうはいきません。何があるか分からないから検査しましょう、となって、血液検査、心電図、レントゲンはもちろん、CTやMRI、時にはリンパ管造影なども予定されることもあるかもしれません。最近はそのための複雑な診断チャートなどを作成する動きもたびたび見受けられます。

 私は数十年に亘りリンパ浮腫を拝見してきましたが、これまでリンパ浮腫と診断して後で誤診として問題になった経験はありません。これまでの検査結果や経過をお聞きして診察で静脈やほかの疾患を順序だてて除外すればリンパ浮腫との診断自体はけして難しいことではないのではないかと思っております。

 では種々の検査の意味は何かと言うと、簡単に言うとその結果が治療方法およびその効果に反映される可能性のある場合と思われます。逆に言うと単なる診断目的ではあえて必要ないとも思われます。

 私はすでに30年以上も前にRI(アイソトープ)リンパ管造影を盛んに行っていました。当時、リンパ管造影と言うとレニウムコロイドと言う物質が用いられていましたが、分子量が大きくてリンパ節を描出するには良いけれどリンパ管を見るには適さないので様々試してみておりましたが、最終的にHSA(ヒト血清アルブミン)が一般的に使われるようになりました。ここで申し上げたいのは、同じ方でも同じリンパ管造影像が出ることはまずなかったという事です。それほどにリンパ管はその時々で変化します。リンパ管の太さもそうで、当時直接法と言って皮下のリンパ管を見つけて注射針を挿入し造影剤を注入したのですが、見つけた時は例えば釣り糸のような細さでも、しばらく刺激を加えたりしますと簡単に木綿糸くらいに太くなります。すなわち、リンパ管の太さも経路もその時々どんどん変動するのです。また、”リンパ浮腫のむくみの水は何処を流れるのか”で書きましたように、むくみ自体も簡単に動き回ります。 したがって、リンパ管の検査によって得られた情報はあくまでその時の状態を示しているものと言えます。

 もちろん検査をすべて否定するものではなく、リンパ管静脈吻合のための術前検査であったり、様々な目的はあるかとは思いますが、少なくともリンパ浮腫の診断は一次性リンパ浮腫など特殊なケースを除いて、多くの場合体系だった流れに基づく多くの負担のかかる検査は必要ないと思われます。

 がんの手術などですでに大きなご負担をお持ちの方がそれ以上余計な負担が生じないよう、必要最小限の治療を、と言い続けてきましたが、さらに加えて必要最小限の診断をお受けになることをお勧めいたします。

暑い夏は近辺にあまり花が見られません。緑の中に唯一サルスベリが華やかに見えます。(廣田彰男)

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